飛行機に乗って海外旅行をするように、宇宙船で旅する“宇宙旅行時代”が間もなく訪れようとしています。ASTRAXに出合い、宇宙を舞台に夢を実現しようとしている人たちは、普段は何をしていて、どのようなことをきっかけに宇宙とかかわるようになったのでしょうか。宇宙に活躍の場を広げようとする“ASTRAXな人たち”をご紹介します。
ASTRAX IMAGINE(アストラックス イマジン) 代表取締役 桐原祐子(きりはら ゆうこ)さん
宇宙旅行をアテンドする「スペースフライトアテンダント」を世に広める
人の成長に立ち会えるのは、大きな喜び
── 元々は航空会社のキャビンアテンダント(CA)さんだったそうですね。
はい。子どもの頃から空を飛ぶ夢を見ることが多く、またそれが好きだったこともあって、航空業界に関心を持ち、CAになりました。でも、最初は落ちこぼれで(笑)。2か月ほど訓練があるのですが、成績がとても悪く、再試験の常習者でした。
実際に乗務を始めてからも、自分としては失敗が多かったなと感じています。ただ、失敗があったからこそ成長できたのかなと感じることもたくさんありますね。
はい。子どもの頃から空を飛ぶ夢を見ることが多く、またそれが好きだったこともあって、航空業界に関心を持ち、CAになりました。でも、最初は落ちこぼれで(笑)。2か月ほど訓練があるのですが、成績がとても悪く、再試験の常習者でした。
実際に乗務を始めてからも、自分としては失敗が多かったなと感じています。ただ、失敗があったからこそ成長できたのかなと感じることもたくさんありますね。
乗務し始めて3~4か月目、大みそかのフライトがありました。地方都市間を結ぶ便で、帰省される方で満席の状態でした。お酒を召し上がっている方も多く、ご機嫌なおじさまたちがたくさん搭乗されていました。
私はいつも通り離陸前の安全性チェックをしたのですが、その時にも時間がかかってしまい、お客様のことよりも時間通りにチェックを済ませることばかりを考えていました。
「シートベルトを締めてください」とお伝えしてもなかなか締めてくださらなかったり、ベルトの締め方がわからなかったりする方も多く、お手伝いに手間取っていました。
ようやくチェックを済ませて離陸する時、隣に2か月先輩のCAが座っていました。「今日の便は大変そうだね」と私が言うと、彼女は「そうだね」と言った後、「出稼ぎからお家に帰られるお客様が多いから、きっと嬉しいんだよね」と言いました。
私はそれを聞いた時、彼女は私とたった2か月しか社歴が変わらないのに、こんなにお客様の立場や気持ちに寄り添ってあげられるのか、と驚き、自分の在り方を振り返るきっかけになりました。そういう経験や失敗、学びを繰り返して、本当のCAになれたのかなと思います。
始めた当初はすぐ辞めるかも、と思っていましたが、蓋を開けてみると22年間、CAとして勤務することができました。本当に、周りの方から色々学ばせていただくことで成長してこられたなと実感しています。
── 航空会社に勤務されている頃は、最年少でCAを指導する教官にもなられたそうですね。
「インフライトインストラクター」と言って、OJTの指導担当になりました。その時がとても楽しかったんです。というのも、担当した訓練生の皆さんがとても素晴らしくて、その子達に教わったり、教えた以上のことを学んでくれたりしたのです。
自分が担当した訓練生たちがどんどん成長していく姿を見るのは、本当に嬉しいことでした。その時に、教えることの楽しさや喜びを知りましたね。その様子を上司が見て、私は人に教えるのが得意なのではと考え、教官を担当させていただきました。
「インフライトインストラクター」と言って、OJTの指導担当になりました。その時がとても楽しかったんです。というのも、担当した訓練生の皆さんがとても素晴らしくて、その子達に教わったり、教えた以上のことを学んでくれたりしたのです。
自分が担当した訓練生たちがどんどん成長していく姿を見るのは、本当に嬉しいことでした。その時に、教えることの楽しさや喜びを知りましたね。その様子を上司が見て、私は人に教えるのが得意なのではと考え、教官を担当させていただきました。
人を教える時、「これだからこうしなさい」だけでなく、物事の背景や理由も含めて伝えられたらと思っています。
また、最速・最短の道を行くだけが良いことではなくて、時には回り道しても良いんだ、ということを伝えています。私自身が、回り道をして色々学んだ経験があるので(笑)。
── 指導していて嬉しい、楽しいのはどんな時ですか?
心配を抱えていたり、伸び悩んでいた訓練生と話をすることで、心配がなくなったり、グンと成長する姿を見るのは本当に嬉しいですし、やりがいを感じます。
今でも覚えているのが、18歳のシンガポール人の訓練生を担当したときのこと。落ちこぼれていて、ちょっとやさぐれた感じになっていたんです。私、乗務している時、朝日が出るのを必ず見るようにしていたんです。機内から朝日を見ると本当に美しくて、すごく元気になっていたので、そのことを彼女に伝えました。「訓練が終わって、シンガポールから日本に来る便に乗った時、朝日が出るのを見てごらん。悩みなんてちっぽけなことだと思えるはずよ」とするとその後、見違えるように成績が良くなったんです。
おそらく、彼女の中で気持ちが前向きになれたんでしょうね。それ以来、空港などで私のことを見かけると、遠くからでも手を振ってあいさつしてくれて。人の成長を目の当たりにするというのは、本当に素晴らしい経験だなといつも思います。
22年間CAとして勤務した後、元の航空会社の関連会社からCAになるための塾というか、セカンドスクールを立ち上げるお手伝いをしてほしいというお声がけをいただいて、カリキュラムの作成を手掛けることになりました。
また、その後友人がCAになりたい方をサポートする就活の学校を作るということで、講師として参画することになりました。こうして、人に何かをお伝えしたり、成長の手助けをしてくのが私の役割なのかなと感じています。
心配を抱えていたり、伸び悩んでいた訓練生と話をすることで、心配がなくなったり、グンと成長する姿を見るのは本当に嬉しいですし、やりがいを感じます。
今でも覚えているのが、18歳のシンガポール人の訓練生を担当したときのこと。落ちこぼれていて、ちょっとやさぐれた感じになっていたんです。私、乗務している時、朝日が出るのを必ず見るようにしていたんです。機内から朝日を見ると本当に美しくて、すごく元気になっていたので、そのことを彼女に伝えました。「訓練が終わって、シンガポールから日本に来る便に乗った時、朝日が出るのを見てごらん。悩みなんてちっぽけなことだと思えるはずよ」とするとその後、見違えるように成績が良くなったんです。
おそらく、彼女の中で気持ちが前向きになれたんでしょうね。それ以来、空港などで私のことを見かけると、遠くからでも手を振ってあいさつしてくれて。人の成長を目の当たりにするというのは、本当に素晴らしい経験だなといつも思います。
22年間CAとして勤務した後、元の航空会社の関連会社からCAになるための塾というか、セカンドスクールを立ち上げるお手伝いをしてほしいというお声がけをいただいて、カリキュラムの作成を手掛けることになりました。
また、その後友人がCAになりたい方をサポートする就活の学校を作るということで、講師として参画することになりました。こうして、人に何かをお伝えしたり、成長の手助けをしてくのが私の役割なのかなと感じています。
── ASTRAX IMAGINEの事業についてお伺いしたいのですが、どういうきっかけで始められたのでしょう?
ASTRAXの山崎さんが、将来宇宙旅行が現実化した際にはCAのような人材が必要だと考え、お話をいただいたのがきっかけです。私たちは「スペースフライトアテンダント」という名称を付けて、宇宙旅行に行く前から、帰ってくるまでの旅程を全般的にサポートする人材の育成を目指しています。
実は私自身、子どもの頃から宇宙船に乗る夢を見ることが多く、強い興味がありました。ですから、こうしたお話をいただいたのも、ご縁だなと感じますね。本当に幸せで、ありがたい気持ちです。
── スペースフライトアテンダントと、CAとの違いはどんなところにあるのでしょう?
もちろん、搭乗する機材や環境などが違うのは当然ですが、私が一番大きく違うと考えているのは「チームビルディング」です。今のところ、宇宙船の旅は飛行機のように移動で使うものではなく、その方々にとって一生にたった一度の、大切なものになるはず。しかも、数時間、場合によっては数十分という非常に短い時間になります。
お客様が宇宙旅行のチケットを手にされた時から、実際に宇宙船に乗っている時、そして終わった後も、同じ宇宙船に乗ったメンバー間には強い絆が生まれるはずです。また、宇宙に行ったらやりたいこと、見たいものは人それぞれ違うはず。
メンバー同士で協力し合い、一緒に宇宙に行ったみんなの夢や希望を実現して、最高の宇宙旅行になったね!と全員で喜びたい。そういうチーム作りをできることこそが何より大切だと私は考えています。そこが、飛行機のCAとは全く違う部分だと思います。
ですから、サービスに熟練している必要もあるでしょうし、当面はアメリカから宇宙旅行に出発しますから、英語力も必要。それに加えて、ファシリテーション能力は必須ではないかと感じています。同じ便に搭乗するみんなを引き込んで、それぞれの意見やニーズを出しやすい雰囲気を作りつつ、こちらからも提案していく「おせっかい力」も必要だと思います。
宇宙でしたいことはあるけれど、遠慮して言い出せない方にはこちらから引き出したり、提案する。逆に、本当に宇宙空間で静かに過ごしたい方はそっとしておいてあげる。そういう見極め力、状況把握能力も大切になると考えています。こうしたことが実現できたら、参加された方にとってきっと価値のある宇宙旅行になるはずです。
加えて、安心感や付加価値を提供できる存在でありたいですね。スペースフライトアテンダントには必ず救急救命士の訓練を受けてもらおうと思っていますし、付加価値という意味で言えば、無重力状態でも良い構図の写真を撮れる技術も必要だと思っています。
スペースフライトアテンダントが、未来の花形職業に
── スペースフライトアテンダントの養成カリキュラムはどのような内容になるのでしょう?
CAの教育・訓練で培ってきた経験を活かして、サービス、保安業務、急病人の介護などについては十分な知識やノウハウが提供できます。こうした知識やノウハウを、山崎さんの宇宙に関する知識を合体させていって作っていくことになります。
また、宇宙船の機材知識なども吸収し、訓練内容に反映していく必要があります。まだまだ道半ばですが、いざという時にはすぐに始められるよう準備をしています。忙しいこともありますが、とても楽しいです。
── スペースフライトアテンダントは、CA経験者の方に限られるんでしょうか?
いいえ、CA経験のある方はもちろんですが、そうではない方もご興味あればぜひ参加していただきたいと思っています。男女も問いません。ただ、先ほどお話したおせっかい力や、ホスピタリティに溢れていることは大前提になると思います。
── 今後の展開についてお聞かせください。
今から50年前だと、CAは最先端で花形の職業だと社会的に認知されていたと思います。今から10年後には、スペースフライトアテンダントがそのように、最先端でステキな仕事だと認知されていると私は信じています。
宇宙旅行が普及していくにつれ、スペースフライトアテンダントの役割や存在感もきっと、大きくなっていくのではないかと思います。
プロフィール
桐原祐子(きりはらゆうこ)
ASTRAX IMAGINE(アストラックス イマジン)。
大手航空会社でCAを務めた髙橋千惠子氏と桐原祐子氏で株式会社 ASTRAX IMAGINEを設立を設立、運営。Space Flight Attendant(SFA)「スペース・フライト・アテンダント」の養成を目指している。