ASTRAXな人たちの宇宙人生劇場/Episode 15 フジコン株式会社 代表取締役社長 | 大島右京さん

飛行機に乗って海外旅行をするように、宇宙船で旅する“宇宙旅行時代”が間もなく訪れようとしています。ASTRAXに出合い、宇宙を舞台に夢を実現しようとしている人たちは、普段は何をしていて、どのようなことをきっかけに宇宙とかかわるようになったのでしょうか。宇宙に活躍の場を広げようとする“ASTRAXな人たち”をご紹介します。

Episode 15 フジコン株式会社 代表取締役社長 | 大島右京さん

ものづくり企業の二代目社長が挑む、宇宙ビジネス

おしゃれな紳士淑女の集う、電子部品メーカー

── 事業や会社のことを教えてください。
弊社は電線や電子機器などをつなぐ「端子盤」という電子部品を作っており、私は2代目経営者です。
小学生の頃から父の背中を見て、あとを継ぎたいと思っていました。当時は端子盤のことはわかりませんでしたが、父は社員さんからもお客さんからも信頼されていました。そんな父のあり方を見て、父のような経営者になりたかったんです。
製造業は3Kとか、おしゃれや紳士淑女とは対極のイメージを持たれている業界ですが、弊社では、「日本一、紳士淑女が集う製造会社」というビジョンを掲げています。そのモデルは父である会長や、「サプール」です。私を含めた会社員がマナー研修を受け、紳士淑女の立居振舞を学び、実践しています。
── サプールというのは?
アフリカ・コンゴで平和を発信するおしゃれな紳士集団です。私は元々、娘たちにモテたくておしゃれに興味があったのですが、来日したサプールのイベントに参加した時に、サプールの本当の意味を知りました。コンゴでは今も紛争が起きており、コンゴの国をよくしたい、でも言論の自由がなく言葉で発すると政府に弾圧されてしまう。おしゃれな格好をすると背筋が伸びて心が整います。貧しいけれどコツコツお金を貯めて、週末におしゃれな格好をして街を歩き、子どもたちに元気を与える。そうやって装いを通じて平和を世界に発信する人たちがサブールなのです。それに共感し、また父である会長が普段から身だしなみを意識し、だれに対してもジェントルマンなので、それがサプールと共通すると思い応援しています。

社員もびっくり。突然、社長が宇宙事業参入を宣言
── 宇宙事業に関心を持ったきっかけは?
2018年の3月1日に東京商工会議所の視察の一環で、NASAを見学しました。45年前に打ち上げができなかったロケットが展示されており、その先端の内部が見れるようになっていたのです。ものづくりに携わっているので、ついその中身が気になって、のぞきこんだら端子盤がたくさん搭載されているのが見えました。45年前のロケットに端子版がたくさん使われていることにびっくりしました。それが宇宙と出会ったきっかけです。ロケットは電子機器の塊なので、端子盤が使われていたのは当然と言えば当然。宇宙産業は遠い世界だと、市場としてはまったく意識していませんでしたが、いけるな、と思ったんです。

── その後はどのように行動されたのですか?
帰国したら経営者の友人から、松本零士さんと山崎大地さんのトークショーに誘われました。そこで宇宙は無限に可能性があるとわかり宇宙ビジネスに対して興味が湧いたんです。興奮して翌日会社に出社し、若手の幹部に「宇宙はこれからすごいよ」と話したら、「社長、そういえば先週、お客さんから宇宙関連の引き合いがありましたよ」と。それが既存のお客様で、調べてみたらすでに宇宙関係の地上設備にうちの部品が使われていました。その時点で新年度の組織が決まっていたのですが、私の独断で組織に宇宙ビジネス事業部を入れ込み、山崎さんに顧問になっていただくことになりました。ただ社員は「宇宙?」とぽかんとしていました。宇宙事業部で何をするのかは、まったく決まっていませんでした。ただ既存の取引があるということがわかったので、宇宙産業市場を攻めようということでスタートしたんです。

「100年企業」を目指して、宇宙市場を拓く
── 既存顧客に納品されていたのは、宇宙用に開発された製品だったのですか?
特注品ではなくカタログに載せている製品が使われていました。宇宙用は特別な仕様のものしか採用されないだろうと勝手な思い込みがあったのですが、先入観がなくなりました。宇宙産業を意識さえすれば市場を攻められるとわかったんです。まず宇宙という違う環境でも使える端子盤を開発しようと、「宇宙端子」と「宇宙コネクタ」の商標を出願しました。またJIS Q 9100という航空宇宙マネジメントシステムの国際規格があるので、経営者仲間で、すでに航空宇宙産業に参入している会社に規格の取り方など教えてもらい、自分たちで情報収集しながら進めているところです。
それから、私と技術責任者が無重力体験をして、無重力で端子盤が接続できるのか、という実験をしました。宇宙と言えば無重力。無重力を私たちが体験したうえで開発を目指す方が説得力が増すからです。「紳士淑女が集う製造会社」や「健康経営」のPRとして、無重力空間で靴磨きや健康経営シャドウボクシングも一緒に動画に撮りました。
── 宇宙事業や会社を、将来はどのようにしていきたいとお考えですか?
航空産業は競争が激しくなっていますが、宇宙産業はまだまだ競争が少なく、規格を持っていれば売りやすくなり、認知もされやすくなると考えています。
今年、弊社は創業54年目です。これまでの50年はこの端子盤というひとつの部品に特化して続いてきました。この先50年で「100年企業」を目指すには、これひとつだけというのはリスクです。宇宙ビジネスは無限の可能性があることを、先日、山崎さんに社内で講演会をしてもらいました。これからは社員と共に「宇宙アンテナ」をピンと立てて、皆で知恵を結集して、どんな新事業ができるか皆で考えて、皆で形にしてワクワクしたいですね。

プロフィール

大島右京(おおしま・うきょう)
フジコン株式会社代表取締役社長。2015年に創業者(現会長)の父より経営を受け継ぎ、2018年に宇宙ビジネス事業部を立ち上げる。妻と2女の4人家族。
『創業50年、電子部品「端子盤」専業メーカーの二代目経営者。学生時代にいじめやコンプレックスに苦悩するも格闘技を通じて克服。1998年入社、2015年に創業者からバトンタッチを受ける。現在は100年企業を目指し「幸せ創造体系図」に基づく理念経営を展開。新価値創造にも果敢に取り組み、宇宙ビジネス、健康経営、おもてなし経営、スター経営など業種の枠を超えたユニークな活動を展開中。趣味多数。経営者勉強会を主宰し創設16年で180回以上開催。』
http://www.fujicon-tb.co.jp