ASTRAXな人たちの宇宙人生劇場/Episode 20 ASTRAX IMAGINE(アストラックス イマジン) | 髙橋千惠子さん

飛行機に乗って海外旅行をするように、宇宙船で旅する“宇宙旅行時代”が間もなく訪れようとしています。ASTRAXに出合い、宇宙を舞台に夢を実現しようとしている人たちは、普段は何をしていて、どのようなことをきっかけに宇宙とかかわるようになったのでしょうか。宇宙に活躍の場を広げようとする“ASTRAXな人たち”をご紹介します。

Episode 20
ASTRAX IMAGINE(アストラックス イマジン) 髙橋千惠子さん

世界平和に貢献できる、宇宙アテンド事業を目指す

空を飛ぶ仕事は天職だった

── 空に興味を持ったのはいつからですか?
子どもの頃から魔法使いサリーちゃんのように箒にまたがって、空を飛びたいと思っていました。そして雲の上はどうなっているか見てみたい、星の近くに行きたいと、強く憧れていましたね。普通の子どもは看護師さんや先生になりたいなど、もっと具体的なことを考えると思いますが、私は少し変わっていました。小学生の時に『スチュワーデスになるために』という本を読んでいたのも、子どもなりに空を飛ぶにはどうしたらよいか考えていたのだと思います。
── そこからキャビン・アテンダント(CA)になられたのですね。
空で仕事をしたいという真剣な気持ちと意気込みが面接官に伝わったのか、1回で合格してCAになりました。私が入社した当時、CAの定年は32歳。昭和62年に均等法ができて60歳まで延び、試験を受けて総合職に転換したり、出向でほかの職種に就くことも可能です。ただ基本的には専門職で入社しており、3か月に1回フライトしていないと資格が保てません。CAとして定年まで飛んでいたかったのですが、家族の諸事情でいったん退職しました。ちょうど退職前に、OG採用試験を受験すれば、もう一度正社員として働けるという会社の制度ができたので、退職する決心がついたのです。それからニューヨークで3年ぐらい、初めて仕事をしない、専業主婦となり、社会に貢献できない立場を経験しました。最初は、自由な時間があることが楽しくて仕方ありませんでしたが、飛べない、働けないというストレスでいっぱい。CAは天職だと思っていたので、辞めたことがすごく残念で尾を引いていたんです。ですから日本に帰ったら絶対CAに戻ろうと思っていました。ところがいざ戻ってみると、定年まで続けるには難しい仕事だと気付いたんです。24時間寝ないこともあったり、体力的に年齢と共に非常に厳しい仕事です。そこでCAの経験を活かせる接客業でお客様満足度を高めるコンサルタントやコミュニケーションスキルを伝える企業研修の仕事に就きました。ただずっと空に憧れる気持ちはあって、そういう時に山崎大地さんと出逢ったのです。

即決で、Space Flight Attendant (以降SFA)を育てる事業を起ち上げる
── 山崎さんとの出会いが宇宙につながっていったのですね。
きっかけは山崎さんが私のCA時代の後輩に、SFAをやってくれる人を探していると話したことです。その後輩はヒューストンで山崎さんと知り合ったのですが、自分は無理なのでやれそうな人を紹介します、と私を紹介してくださったのです。山崎さんからは、サポートするのでぜひやりませんか、と。私は、全然宇宙のことはわかりませんが、空よりも更に高い憧れの宇宙に行けるならチャレンジしてみたいと、お話を伺って心の中では即決したい気持ちでした。2年ぐらい前のことです。

── 宇宙船や宇宙旅行について、詳しかったのですか?
ほとんど知らなかったんです。けれども、山崎さんの経歴と情熱的な本気度に加えて、そのエネルギーの強さに惹かれて乗ってみたいと思ました。もともと自分の中には空の仕事をやりたいという気持ちがあって、もうひとつ上の仕事に、人生最後のチャレンジをしてみようと。ただ1人では無理で、山崎さんからは、パートナーと3人でやるのが良いとアドバイスをいただきました。2人、4人は、新しい未知のことをやるのに意見が分かれやすいからと。とにかく先ずはパートナーがいなければチャレンジできない!?という気持ちで直ぐ仲良しの前職の同期に先のストーリーを話してみたら・・・なんと彼女は「宇宙への憧れは私以上」だったのです。
即二人でチャレンジすることを決めました。結局当初は山崎さんのご紹介者を含む4人でスタートし、それぞれの事情で今は2人になりました。なんとか2人で頑張っていくつもりです。

── ASTRAX IMAGINEの事業について教えてください。

今、すべての乗り物にはアテンダントがいて、宇宙船にも必ずアテンダントが必要になります。日本人が海外旅行に行く時に、ツアーで行く人の割合は、昔は7、8割、今は56%ぐらいです。つまり、6割近い旅行者がアテンド付きのツアーを利用しているのです。豪華客船で世界一周旅行のアテンダントをしている友人曰く、「経済的に豊かな方々も日本人はアテンダントが必要」なのだそうです。ましてや宇宙にアテンドなしに日本人は行くでしょうか。充分ニーズがある事業だと思います。そのアテンドを、成田や羽田を出発してから宇宙に行き、また成田や羽田に戻ってくるまでの一連のアテンドとしてできたら、とても理想的なものになるでしょう。それがASTRAX IMAGINEの宇宙アテンド事業です。そのアテンドで活躍するSFAは、宇宙に関する知識と経験があり、ユニバーサルな考えができる人財が相応しいと考えています。また、常にお客様の気持ちに寄り添いニーズを引き出して、最高の満足をして頂けるようなSFAの育成プログラムを考えている最中です。

目指すは世界平和。宇宙から地球を見る体験をより多くの人に提供したい
── ご自身も宇宙CAとして行く予定はありますか?
できれば行きたいと思っています。今現在は、ブルーオリジンかヴァージンのロケットが一早く宇宙に旅立つと言われていますが、ASTRAX IMGINEとしてブルーオリジンの宇宙船のチャーター2フライト分の仮予約をしています。集客ができれば、私たちもお客様とご一緒に飛べるチャンスがあります。既存に無い職業であるSFAとしての初フライトの実績ができればと思っています。自分自身が宇宙に行ったこともないのに、宇宙に行く人材を育てるというのはおこがましいかなというのもありますから、トライはします。目指すところは世界平和です。NASAの宇宙飛行士が、自分のいない地球を見て思うことは皆一緒でした。地球上でのつまらない争いなどくだらないことであり、「同じ地球人としてこの美しいホームを守らなければいけない」と、多くの人に感じて頂ける素晴らしい旅のお手伝いができたらと考えています。

── なぜ世界平和に貢献したいと思われたのですか?
ニューヨークでは国連本部の真ん前に住んでいたんです。よく国連にランチに行ったり国連の様々なツアーに参加しているうちに、世界平和や世の中の役に立つことをしていかないといけないという意識が芽生えました。山崎さんに「先ず最初に具体的には何から始めればいいのですか?」と伺ったところ、国連の宇宙週間の中で、「イベントをやってみると良い」と言われた時につながったんです。宇宙飛行士が共通して考えることが世界平和でした。だから宇宙空間に1人でも多くのお客様をご案内して、体験していただくことが世界平和に繋がる道じゃないかと思ったのです。

── これからASTRAX IMAGINEとして、どんなことをしていきたいと考えていますか?
今、Space Flight Attendantという、世界初の職業を創るワクワク感があります。それを実現するため、高いハードルを乗り越える精神力と知恵を高めていかなければなりません。また、より多くのお客様に宇宙に行っていただき、宇宙飛行士と同じような体感ができるよう、サポートをしていけたらよいと思います。会社としても個人としても、ライフワークを見いだせたら、今度は人様にスポットを当てて、幸せのサポートができるようなライトワークに従事する。そういう仕事のあり方の一例として、この会社が位置付けられる日が来たらいいなぁという夢を描いています。


プロフィール

髙橋千惠子(たかはしちえこ)
ASTRAX IMAGINE(アストラックス イマジン)。
大手航空会社でCAを務めた髙橋千惠子氏と桐原裕子氏でASTRAX IMAGINEを設立、運営。Space Flight Attendant(SFA)「スペース・フライト・アテンダント」の養成を目指している。