飛行機に乗って海外旅行をするように、宇宙船で旅する“宇宙旅行時代”が間もなく訪れようとしています。ASTRAXに出合い、宇宙を舞台に夢を実現しようとしている人たちは、普段は何をしていて、どのようなことをきっかけに宇宙とかかわるようになったのでしょうか。宇宙に活躍の場を広げようとする“ASTRAXな人たち”をご紹介します。
Episode 5 音楽家 | 辻早紀さん
宇宙を使って新しい音楽エンターテインメントをやりたい
ミュージシャンに憧れて、独学で身につけた曲作り
── 辻さんがミュージシャンになろうと思われたきっかけをお聞かせください。
物心ついたときから歌うことが大好きで、「将来はミュージシャンになる」と心に決めたのは小学生の頃でした。兄が始めたバンドのビートルズのコピーが、とんでもなくカッコよくて……。お年玉やおこづかいを貯めて、ギターを入手したのは高校生のとき。始めたばかりだから当然、技術もないけれど、自分で“スリーコード”を覚えて、早々に曲を作りはじめていましたね。歌うこと、曲を作ることがとにかく好きで、それはいまでも変わっていません。卒業後は専門学校に入ったものの、学校で教わる音楽理論はすでに独学でマスターしていたので半年で辞め、その後、兄と一緒にインディーズでバンド活動を始めました。
物心ついたときから歌うことが大好きで、「将来はミュージシャンになる」と心に決めたのは小学生の頃でした。兄が始めたバンドのビートルズのコピーが、とんでもなくカッコよくて……。お年玉やおこづかいを貯めて、ギターを入手したのは高校生のとき。始めたばかりだから当然、技術もないけれど、自分で“スリーコード”を覚えて、早々に曲を作りはじめていましたね。歌うこと、曲を作ることがとにかく好きで、それはいまでも変わっていません。卒業後は専門学校に入ったものの、学校で教わる音楽理論はすでに独学でマスターしていたので半年で辞め、その後、兄と一緒にインディーズでバンド活動を始めました。
辻が二人だから「TWOGEE(トゥージー)」というバンド名にして、東京のライブハウスを中心に5年ほど活動しました。兄がメインのバンドだったので、私はギターとコーラスを担当、パーカッションとベースを入れてメンバーは4人でした。タワーレコードのチャートにも入って、そこそこ人気もありましたが、当時はメジャー志向が強かったこともあり、ある日、業界の人へのプレゼンも兼ねて1,000人くらいのライブで勝負に出たんです。残念ながらメジャーデビューは叶わず、兄は解散を決めました。20代後半に差しかかっていましたが、この先どうやって音楽で生きていくのかをイチから考え直す時期でした。
大人になって気づいたクラシックの奥深さ
── それまでポップス系だった辻さんが、クラシックに興味を持ちはじめたのは、その頃でしょうか。
年齢を重ねていくほど、だんだんポップスのようなリズムが強調されたものに疲れてきまして、それまでやってこなかったクラシックやオーケストラの楽曲に惹かれるようになりました。クラシックは決まりごとが多いものの、音楽理論は基本的にジャンルを問わず同じです。本やネットでクラシックの理論を学び、近所でやっていた神奈川フィルハーモニー管弦楽団のリハーサルに足繁く通って聴いているうちに、難解に思われたクラシックやオーケストラの曲も、なるほど、こういうことかと腑に落ちていきました。
年齢を重ねていくほど、だんだんポップスのようなリズムが強調されたものに疲れてきまして、それまでやってこなかったクラシックやオーケストラの楽曲に惹かれるようになりました。クラシックは決まりごとが多いものの、音楽理論は基本的にジャンルを問わず同じです。本やネットでクラシックの理論を学び、近所でやっていた神奈川フィルハーモニー管弦楽団のリハーサルに足繁く通って聴いているうちに、難解に思われたクラシックやオーケストラの曲も、なるほど、こういうことかと腑に落ちていきました。
音楽業界にとって、とりわけ厳しいこの時代、どうやって活路を見出していこうかと模索しているときに、音楽葬が増えている状況を知りました。早速、「葬送歌」三部作を作って売り込みを始めたところ、葬儀プロデューサーの葛西智子さんが興味を持ってくださって、音楽葬などで一緒に活動させてもらうようになったんです。ある日、葛西さんから「宇宙散骨」のテーマ曲を作ってほしいと依頼されたのですが、イメージが湧かず……。宇宙や宇宙散骨について詳しく話を聞くために、葛西さんのご紹介で会うことになったのがASTRAX代表の山崎大地さんです。そのとき聞いた話からイメージを膨らませて作ったのが宇宙散骨のテーマ曲「Ecohes(エコーズ)」です。
── 辻さんは5月の国際宇宙開発会議(ISDC)で、プレゼンテーションをされたんですよね。
そうなんです。宇宙に関わりはじめてまだ1年ほどですが、山崎さんと話しているうちに「宇宙を使って新しい音楽エンターテインメントを行いたい」という気持ちがむくむくとわいてきて、「グローバル・スペース・オーケストラ」という企画を立ち上げ、ロサンゼルスで発表してきました。私が宇宙から指揮して、地球にいる人たちが演奏や歌で参加するという構想で、イメージとしては佐渡裕さんが行われている一万人で歌う「第九」というのが日本にはありますけど、それの世界版というか、宇宙版です。平和をテーマに作られた僕の音楽を、宇宙へ飛び出した僕と世界のあらゆる場所で行われる演奏とをインターネットで同時に繋ぎ、一斉に行うというものです。新しい目線で平和のメッセージを掲げて、世界中から1億人参加してくれることを目標にしたいと考えています。実はこの会議に行って、シビれるほどうれしいことがあったんですよ。
そうなんです。宇宙に関わりはじめてまだ1年ほどですが、山崎さんと話しているうちに「宇宙を使って新しい音楽エンターテインメントを行いたい」という気持ちがむくむくとわいてきて、「グローバル・スペース・オーケストラ」という企画を立ち上げ、ロサンゼルスで発表してきました。私が宇宙から指揮して、地球にいる人たちが演奏や歌で参加するという構想で、イメージとしては佐渡裕さんが行われている一万人で歌う「第九」というのが日本にはありますけど、それの世界版というか、宇宙版です。平和をテーマに作られた僕の音楽を、宇宙へ飛び出した僕と世界のあらゆる場所で行われる演奏とをインターネットで同時に繋ぎ、一斉に行うというものです。新しい目線で平和のメッセージを掲げて、世界中から1億人参加してくれることを目標にしたいと考えています。実はこの会議に行って、シビれるほどうれしいことがあったんですよ。
この機会を経て、世界的なプロジェクトに関わることになったんです。宇宙に放置されている使用済みの人工衛星などを「宇宙ゴミ」というのですが、この問題を知ったときから解決策はないものかと案じてきました。会議でISDCを主催しているNSS(National Space Society)が、人工衛星に関する国際的なルール作りを進めていくという発表を聞き、「NSSの取り組みに強く賛同する。私は音楽家だから曲作りで協力させてほしい!」と熱く語ったら、プロジェクト音楽を担当させてもらえることが決まったんです。宇宙と関わりはじめてから、広がり方が半端ない。どこまで広がるか未知数ですが、自分でリミッターを設けないで、これからも挑戦し続けます。
プロフィール
辻早紀(つじ・はやき)
1980年生まれ。音楽家。シンガーソングライター、プロデューサー、アレンジャー、ボイストレーナー。辻音楽事務所代表。USENラジオ、NHKラジオへの楽曲提供や宇宙散骨テーマ曲、葛飾北斎「HOKUSAI SUMMIT JAPAN」公式テーマソングなど、手がける楽曲はポップスからジャズ、クラシックまで幅広い。
http://tsujihayaki.jp/