ASTRAXな人たちの宇宙人生劇場/Episode 19 合同会社タヤグラ 代表社員 | 田櫓英樹さん

飛行機に乗って海外旅行をするように、宇宙船で旅する“宇宙旅行時代”が間もなく訪れようとしています。ASTRAXに出合い、宇宙を舞台に夢を実現しようとしている人たちは、普段は何をしていて、どのようなことをきっかけに宇宙とかかわるようになったのでしょうか。宇宙に活躍の場を広げようとする“ASTRAXな人たち”をご紹介します。

Episode 19
合同会社タヤグラ 代表社員 田櫓英樹(たやぐら ひでき)さん

職人が子どもたちに伝えたい、宇宙に広がる無限の可能性

若い人たちになってみたいと思わせる、新しい職人のあり方を求めて会社を設立

── 今のお仕事のことを教えてください。
空調工事の建設職人として、今年で30年になります。ディズニーシーや東大、イオンなど大手の空調を手掛けてきましたが、4年前に、本当の職人の価値を伝えていこうと、職人集団会社を立ち上げました。もともと職人会社を個人事業主として13期やってきて、このままじゃいけない、時代を超えていくことをやろうと、同じ思いの職人さんたちを集めたのです。職人田櫓として、職人が職人のために、職人を続けるために、新たな価値観を持った、職人さんの新たなチームを作って、職人さんたちを次の段階に持っていくということを、今やっています。
── 新しい職人の会社を始めたのはなぜですか?
6、7年前に、単価がどんどん下がってきて職人さんたちが生きにくい時代になってきました。大手や仕事を取ってくる人たちにぶら下がっている状況があって、そうしないと食っていけないと、職人さんたちがお酒を飲みながら愚痴を言っている。でも僕らは居酒屋にお金を払い続けるために職人をやっているわけではないし、人にぶら下がらないと食っていけないということはないんだと、もう一度、職人自ら時代に合わせて価値を上げていきたいと思いました。職人でご飯を食べていける、職人をやっていてよかった、こんな職人になりたいから僕はこんなに頑張っているんだ、と若い人たちに背中を見せていきたい。そして若い人たちに、そんな職人だったらなってみたい、と思ってもらいたかったんです。

── ご自身の職人としてのあり方も含めて、将来のことを考えられたということですね。
自分もまだ職人として生きていきたいし、建設職人を選んだことが間違いじゃなかったという結果を残しておきたいと強く思っていました。職人を諦めてほかの仕事に就く選択肢もある。でもそうしたら18歳ぐらいで家を出て丁稚奉公して修行した、あの頃の思いや覚悟を全部水の泡にしてしまう。それだけは絶対したくないと思いました。では今、何をしなくてはいけないのか。30年やってきて、技術もトップレベルになり、大人として経験を重ね、いろんな人と出会い、お金も動かせるようになった。そんな田櫓英樹が、今やるべきことって何なんだ、と考えながら毎日生きています。

まず自分が一歩踏み出して、笑顔につながる出会いを引き寄せた
── 職人のあり方を変えるために、具体的にはどんなことから始めたのですか?
まず最初にやったことが、自分を変えることです。それまでヘルメットかぶって腰道具付けて、現場で怒鳴り散らしてきたんです。若い職人たちを、どいつもこいつも根性がない、と何人も辞めさせました。大きな転機は、現場でぎっくり腰をやって1か月寝込んだ時。自分の代わりにやってくれる人が誰もいなくて、独りよがりで職人の技術の上にただ胡坐をかいていたことに、そこで気づかされました。人がどうすべきかではなく、自分がどう変わるべきか、ではないかと。そこから、笑顔で楽しくワクワクしながら職人をやっているという姿を、まず自らが見せるようにしました。そのためにはいろいろ学び、本を読んで、今までにやったことのないことを全部しました。それを職人さんたちに伝えるために、今年からコミュニケーション教育協会のプロ講師の仕事を始めています。

── そこから何か変化はありましたか?
地域のイベントで出会った工業高校の先生から、まっしぐらに職人をやってきて、こんなにパワーを持った人と出会ったことがないから、ちょっと生徒を預かってくれないかと頼まれたんです。そこで去年から、酸素ボンベを担いでどうやって歩くか、脚立をどうやって上るか、どんな天井裏の溶接があるのか、など本当の職人の技術を見せて体験してもらっています。インターンシップの最初に、今日この工事が終わらないと帰れないからね、と話しました。子どもたちは、インターンシップで来て残業したのは初めてだったそうです。先生たちからは、自分たちや大企業では伝えられないことを合同会社タヤグラでは伝えてほしい、だから何でもやってください、と言われていました。

── 山崎大地さんとはどのように出会ったのですか?
地元の経営者が集まる千葉県中小企業家同友会で、たまたま山崎さんと知り合いの人がいて紹介されました。自分のコンフォートゾーンから一歩踏み出して、そういう場に学びに行ったからこそ、山崎さんのようにいつも挑戦し続けている人に出会えたのだと思います。今までのように、俺は職人だぜ、ってやっていたら、絶対出会えなかったと思うんです。だから一歩踏み出したことは間違いじゃなかったということですね。山崎さんと出会ってから、ASTRAXの基地にエアコンを付けました。そこに先日初めて、高校生4人と先生を連れて行き、山崎さんの話を聞かせることができたんです。山崎さんや僕と出会って、これから仕事を選ぶ時も、壁にぶつかることがあっても、自分の軸が何なのか、見つけてくれるんじゃないかなと思います。

挑戦して、灯した光に人が集まる喜びを感じていきたい
── 自分の領域から踏み出す勇気が大事だということですね。
今まで自分が生きていたゾーンから一歩踏み出す作業が、皆不安で怖くてできない。でもそこから覚悟を持って踏み出した人には、その外に無限の可能性があるのがわかっているんです。例えば、僕は月の土地を買いましたが、それは宇宙へ可能性を見つけに行くんだという自分の意思表示でもあると思っています。月を買って宇宙を仰ぐと、どんどんそれってやっていいんだよ、間違いじゃないんだよ、可能性がいっぱいあって面白いんだ、だったら動いちゃった方がいいよねと、意識が変わってきます。

── 職人の会社を作ったのも、その可能性の一つということですか?
合同会社タヤグラには、壁に当たった職人さんたちが集まってきています。儲けたいから集まってくれと言ったら誰も集まってくれないと思うんです。職人を変えたい、未来を変えたい、職人の技術をもっと伝えたい、それって最高だよね、って言いだしたから、自分たちも実はこのままじゃ嫌だと思っていたんだよね、でもどうしていいかわからなかったんだ、という人たちが集まってきたんです。真っ暗闇の中で、誰かが一つ光れば、皆その光を探して右往左往しているから、そこにいっぱい人が集まってきます。その喜びは灯した人しかわからない。その人になれたら自分はやってきてよかった、18歳で家を出てきてよかった、というところに全部つながるんじゃないかなと思っています。そして、これから10年後、20年後、30年後にもっともっとよかったという思いが増えるんじゃないかなと思います。それが今、僕の原動力です。

── これからどんなことをやっていきたいと考えていますか?
一歩踏み出して挑戦することが、ものすごく可能性を持っているということを、大人から子どもまで皆に伝えていきたいと思います。むしろそれを伝えるために生まれてきたのかなという実感があります。そういうことを、自分がどんどんスキルを上げて、ASTRAXの人たちと一緒にやっていきたいですね。

プロフィール

田櫓英樹(たやぐら ひでき)
合同会社タヤグラ代表社員。
未来を作る笑顔職人「スマイリングマイスターズ」。
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