飛行機に乗って海外旅行をするように、宇宙船で旅する“宇宙旅行時代”が間もなく訪れようとしています。ASTRAXに出合い、宇宙を舞台に夢を実現しようとしている人たちは、普段は何をしていて、どのようなことをきっかけに宇宙とかかわるようになったのでしょうか。宇宙に活躍の場を広げようとする“ASTRAXな人たち”をご紹介します。
Episode 8 ASTRAX CRUISE | 岡田靖夫さん
宇宙体験や無重力体験によって、人間の信頼を繋げていきたい
紆余曲折な人生を経て、ASTRAXにたどり着いた
── まずは、簡単に自己紹介からお願いできますか?
私の経歴は、紆余曲折しているかもしれません。10代の後半から20代までは、プロのロードレーサーとして、HRCのロードレースに参加していました。しかし、富士スピードウェイでの事故により、頭蓋骨を骨折してしまい、命も危うい状態になりました。8ヶ月入院していたのですが、そのときに病室で見た水中写真家の中村征夫さんの写真に、とても魅了されたんです。そこで退院後は、ダイバーの免許を取得して、水中カメラマンの道を歩むことになります。雑誌に作品を掲載してもらえたりもしたのですが、当時はフィルム写真の時代ということもあり、資金が苦しくなりました。
そんななかで多くの障害者の方と出会い、サポートしたい気持ちが強くなりました。42歳から3年間介護に関して学びました。その後資格を取得して、介護福祉士としてデイサービスで7年間働いたんです。そんなときに身内に介護が必要になり、その後私自身も精神障害で倒れてしまいました。回復してからは、東北や熊本の震災復興に参加していましたね。
約2年前のクリスマスパーティーで、山崎さんにお会いしました。アメリカのワールドビュー社に行く話に誘われて、興味を持ちました。そして2月にワールドビュー社を訪れ、5月に宇宙旅行に申し込みました。現在は、無重力飛行の案内などもしていますね。
一番大きいのは、山崎さんのお人柄ですね。初めてお会いしたときから、情熱を感じました。また、中学生の頃から宇宙には興味があったんです。中学生の頃はいじめられていたんですが、「宇宙から俯瞰して見れば、地上で悩んでいる自分の気持ちは小さいことだな」と思えたんです。こういう風に考えられるようになり、乗り越えられることに気付けました。
翌年には、父親が天体望遠鏡を買ってくれました。それで月を見てから、宇宙への関心が高まりましたね。小学4年生のときには、アポロ11号が月面着陸を成功させ、より興味を持つようになりました。このようなバックグラウンドがあったので、山崎さんにお誘いいただいたときに、参加したいと思えましたね。
私の先祖が着物の商売をしていたこともあり、普段から着用しています。また、普段からアルトサックスも演奏しているんです。なので、着物を着て、アルトサックスで「You Raise Me Up」を演奏してみたいなと思っています。この演奏を発信することで、「みんな同じ地球人なのに、なんで争っているの?」という問いをしてみたいですね。私自身が何を感じるかも興味があるので、それも発信したいと思っていますが、このセッションは必ず実現したいと思っています。いまから、わくわくしていますよ。
山崎さんにお誘いを受けて、2017年11月に名古屋の小牧空港で無重力体験をしました。1フライトで、7~8回の無重力体験ができます。ただ無重力になるだけではなくて、その状態で水を飲む体験もできるんです。無重力状態で出てくる水は、本当にきれいな球体で、驚かされました。アルトサックスは、かなりデリケートで壊れやすいので、ブルースハープという小さなハーモニカで、宇宙で演奏予定の「You Raise Me Up」を披露しました。
やはり無重力を体験したときは、わくわくしましたね。地上が見えたり、空に星が見えたりしたら、どれだけ楽しいんだろうと思いました。
── ASTRAXに期待していることがあれば、教えてください。
山崎さんは民間の唯一の宇宙飛行士として、先頭に立ってくださっています。ASTRAXは、人類の夢を実現する場所だと思うんです。なので、そういうことをもっと発信して、宇宙の魅力を伝えて欲しいと思いますね。
極論かもしれませんが、人間としての信頼の繋がりが、宇宙体験や無重力体験によって広がれば、戦争は起きないんじゃないかと思っています。私も参加者の方と話をして、提案をして、喜びや気付きを共有して、「また、無重力体験をしたい!」「宇宙に行きたい!」と思ってもらえるように、がんばりたいですね。
岡田靖夫(おかだ・やすお)