飛行機に乗って海外旅行をするように、宇宙船で旅する“宇宙旅行時代”が間もなく訪れようとしています。ASTRAXに出合い、宇宙を舞台に夢を実現しようとしている人たちは、普段は何をしていて、どのようなことをきっかけに宇宙とかかわるようになったのでしょうか。宇宙に活躍の場を広げようとする“ASTRAXな人たち”をご紹介します。
フツウに宇宙にかかわって働く時代がやってくる
── 日本の宇宙ベンチャーの動きも活発になっているようですが。
世界で宇宙ベンチャーはおよそ1000社あり、2030年には1万社になるという予測です。日本は今およそ30社。宇宙ベンチャーの数は少ないですが、国が政策として宇宙ビジネスを支援するようになり、世界からも注目されています。月着陸機や月面ローバーを開発している月輸送や資源利用を目指しているアイスペースは、2017年12月に100億円を超える資金調達をしました。また、小型衛星事業は企画からデータデリバリーまで2年以内にできると調査でもありますが、そうなると、今までリターンまでが5年以上、あるいは10年かかると見られて敬遠されていた宇宙への投資は特別ではなくなっています。宇宙ベンチャー以外でも、ソニーやキャノン、ANAやJALといった非宇宙企業、中小企業、地方企業、他分野のユニコーンといわれているベンチャーも参入しています。
── 宇宙を使うと、どんなサービスや商品が生まれるのでしょうか?
今のところマーケットは地上ですが、マーケットも多様化して、宇宙を利用したプロダクトやサービスが顕著に伸びています。いわゆる宇宙ベンチャーをはじめとした商業宇宙の事業がうみだしているところです。たとえば小型衛星を使った通信事業は5Gに貢献し、地球観測事業は、宇宙でしか取れないデータを取得し、宇宙ベースのビッグデータとして他のデータとAIなどで融合されることによって経済予測や未来予測をします。これはデジタルトランスフォーメーション(デジタルテクノロジーによってビジネスモデルを変革すること)に貢献します。宇宙ベースのデータはあらゆる産業に結び付いて新たな価値をもたらしますが、宇宙利用は私たちの生活が安心・安全で快適にそしてクオリティオブライフ(QOL)までもたらしてくれます。
── 企業もそうですが、いろんな人が宇宙にかかわる仕事をするようになる?
日常に宇宙の視座を取り込んだらもっと面白い
── これから宇宙の仕事で何かやりたいことはありますか?
私は目的意識があまりなくて、気がついたら後ろにやってきたことの道ができていた、ぐらいの感じなんです。宇宙ビジネスコンサルタントと何をしている人かわかるようにつけましたが、当時は怪しく響いていたと思います。縁があってめぐりあったもの、縁があった人と、仕事をしています。宇宙そのものとともに、宇宙というフィルターを通すと日常がちょっと違ってくる、ということにも関心を持っています。たとえば1Gがあるかないかで、建築の様式が違ったり、衣服内環境が違ったりします。日常にも宇宙を取り込んで、ちょっと視点を変えてみたり、インスピレーションを受けてみたり。宇宙から地球を見て、地球や宇宙の環境保全や、命の尊さを意識する宇宙からの視座があります。宇宙からの視座を日常の中に感じることができるのも宇宙開発の恩恵だと思っています。
── 宇宙の視座を日常に取り込むとは?
たとえば日本人は特に月が好きで、文学、建築、風習など、月は身近で愛でられてきました。月のスイーツが各地の銘菓に多いのもびっくりするほどです。それも日常に月を取り込んでいるということだと思います。宇宙が日常の一部になっていたり、もっと積極的に取り込んでみたりして、宇宙という観点を日常に入ると、毎日の生活が豊かになると思っています。今までは、先行している海外の宇宙ビジネスの熱気を伝えるのが自分の役割かなと思ってきました。今後は、もっと宇宙が普通の日常の中に使えるようになっていくお手伝いができればいいのかなと思います。
宇宙では、まだ知らない自分に気づくかもしれない
── もし大貫さんが宇宙旅行に行くとしたら、どんなことをしたいとお考えですか? あるいは何を期待しますか?
市場調査では、無重力体験、地球を見る、星を見る、というのが宇宙に行く三大目的ですが、私は自分のいない地球を見たときの自の内面変化を知りたいと思います。もしかしたらパニックになっているかもしれませんが。狭いところがあまり好きではないので、広いスペースの大きな宇宙船で宇宙に行きたいです。
── どんなショックがあったのですか?
何か次元の違うものを体験しちゃった、という感覚です。スキューバダイビングと違っていたのですが、自分の中が開けるような変化。海中の魚、サンゴといった生命体の不思議。海中に届く光の美しさや温かさ、それを感じながら、翻って人間の不思議も感じる。宇宙であの感覚をもう一度経験できると期待しています。
気がついたら、宇宙ビジネスコンサルタントになっていた
後編:宇宙はもっと日常化する
今やIT企業や通信事業会社をはじめ、ロケットや衛星の開発とは無縁だった企業も宇宙旅行や小型衛星など宇宙の商業利用に熱い視線を注いでいます。アメリカで宇宙ベンチャーの熱気を目の当たりにし、以来、宇宙ビジネスの只中に身を置いてきた大貫美鈴さん。どのようなきっかけで宇宙ビジネスとかかわるようになったのでしょうか。後編では、大貫さんと日常化する宇宙についてご紹介します。
フツウに宇宙にかかわって働く時代がやってくる
── 日本の宇宙ベンチャーの動きも活発になっているようですが。
世界で宇宙ベンチャーはおよそ1000社あり、2030年には1万社になるという予測です。日本は今およそ30社。宇宙ベンチャーの数は少ないですが、国が政策として宇宙ビジネスを支援するようになり、世界からも注目されています。月着陸機や月面ローバーを開発している月輸送や資源利用を目指しているアイスペースは、2017年12月に100億円を超える資金調達をしました。また、小型衛星事業は企画からデータデリバリーまで2年以内にできると調査でもありますが、そうなると、今までリターンまでが5年以上、あるいは10年かかると見られて敬遠されていた宇宙への投資は特別ではなくなっています。宇宙ベンチャー以外でも、ソニーやキャノン、ANAやJALといった非宇宙企業、中小企業、地方企業、他分野のユニコーンといわれているベンチャーも参入しています。
── 宇宙を使うと、どんなサービスや商品が生まれるのでしょうか?
今のところマーケットは地上ですが、マーケットも多様化して、宇宙を利用したプロダクトやサービスが顕著に伸びています。いわゆる宇宙ベンチャーをはじめとした商業宇宙の事業がうみだしているところです。たとえば小型衛星を使った通信事業は5Gに貢献し、地球観測事業は、宇宙でしか取れないデータを取得し、宇宙ベースのビッグデータとして他のデータとAIなどで融合されることによって経済予測や未来予測をします。これはデジタルトランスフォーメーション(デジタルテクノロジーによってビジネスモデルを変革すること)に貢献します。宇宙ベースのデータはあらゆる産業に結び付いて新たな価値をもたらしますが、宇宙利用は私たちの生活が安心・安全で快適にそしてクオリティオブライフ(QOL)までもたらしてくれます。
── 企業もそうですが、いろんな人が宇宙にかかわる仕事をするようになる?
日常に宇宙の視座を取り込んだらもっと面白い
── これから宇宙の仕事で何かやりたいことはありますか?
私は目的意識があまりなくて、気がついたら後ろにやってきたことの道ができていた、ぐらいの感じなんです。宇宙ビジネスコンサルタントと何をしている人かわかるようにつけましたが、当時は怪しく響いていたと思います。縁があってめぐりあったもの、縁があった人と、仕事をしています。宇宙そのものとともに、宇宙というフィルターを通すと日常がちょっと違ってくる、ということにも関心を持っています。たとえば1Gがあるかないかで、建築の様式が違ったり、衣服内環境が違ったりします。日常にも宇宙を取り込んで、ちょっと視点を変えてみたり、インスピレーションを受けてみたり。宇宙から地球を見て、地球や宇宙の環境保全や、命の尊さを意識する宇宙からの視座があります。宇宙からの視座を日常の中に感じることができるのも宇宙開発の恩恵だと思っています。
── 宇宙の視座を日常に取り込むとは?
たとえば日本人は特に月が好きで、文学、建築、風習など、月は身近で愛でられてきました。月のスイーツが各地の銘菓に多いのもびっくりするほどです。それも日常に月を取り込んでいるということだと思います。宇宙が日常の一部になっていたり、もっと積極的に取り込んでみたりして、宇宙という観点を日常に入ると、毎日の生活が豊かになると思っています。今までは、先行している海外の宇宙ビジネスの熱気を伝えるのが自分の役割かなと思ってきました。今後は、もっと宇宙が普通の日常の中に使えるようになっていくお手伝いができればいいのかなと思います。
宇宙では、まだ知らない自分に気づくかもしれない
── 宇宙旅行時代が始まろうとしています。個人にはまだハードルが高いといわれていますが。
2019年はアメリカの有人宇宙機が次々にデビューする歴史的な年になります。スペースXのクルードラゴンやボーイングのスターライナーといった商業オービタル機でスペースシャトル後に途絶えていたアメリカの有人輸送機が復活、そして有人サブオービタル機という新しいプラットフォームの商業運航によって、数千万円で行ける宇宙旅行が実現します。大きな課題は打ち上げコストです。まずはロケットの値段を下げようと再利用競争をしてきました。宇宙旅行も定期運航するようになったら5年後に数百万円に下がるのではないかという展望もあります。ヴァージン・ギャラクティック社のリチャード・ブランソンやブルーオリジンのジェフ・ベゾスがサブオービタル宇宙旅行の実現に挑戦しています。地球ができてから46億年、ガガーリンが宇宙に出てから60年ちかくたつのですが、民間人が宇宙に行けるという、地球の歴史から見るととてつもない時にいるという感覚がいつもあります。
2019年はアメリカの有人宇宙機が次々にデビューする歴史的な年になります。スペースXのクルードラゴンやボーイングのスターライナーといった商業オービタル機でスペースシャトル後に途絶えていたアメリカの有人輸送機が復活、そして有人サブオービタル機という新しいプラットフォームの商業運航によって、数千万円で行ける宇宙旅行が実現します。大きな課題は打ち上げコストです。まずはロケットの値段を下げようと再利用競争をしてきました。宇宙旅行も定期運航するようになったら5年後に数百万円に下がるのではないかという展望もあります。ヴァージン・ギャラクティック社のリチャード・ブランソンやブルーオリジンのジェフ・ベゾスがサブオービタル宇宙旅行の実現に挑戦しています。地球ができてから46億年、ガガーリンが宇宙に出てから60年ちかくたつのですが、民間人が宇宙に行けるという、地球の歴史から見るととてつもない時にいるという感覚がいつもあります。
市場調査では、無重力体験、地球を見る、星を見る、というのが宇宙に行く三大目的ですが、私は自分のいない地球を見たときの自の内面変化を知りたいと思います。もしかしたらパニックになっているかもしれませんが。狭いところがあまり好きではないので、広いスペースの大きな宇宙船で宇宙に行きたいです。
── 無重力体験をした人たちは、世界観が変わったと言いますが。
私も無重力体験は2001年に航空機のパラボリック飛行で経験しました。スキューバダイビングが趣味だったので、海中という別世界を体験し、海中の世界が本当にきれいで感動するとともに中性浮力も経験していましたが、無重力体験は中性浮力とは違う未知の浮遊感の体験で、ショックを受けました。
私も無重力体験は2001年に航空機のパラボリック飛行で経験しました。スキューバダイビングが趣味だったので、海中という別世界を体験し、海中の世界が本当にきれいで感動するとともに中性浮力も経験していましたが、無重力体験は中性浮力とは違う未知の浮遊感の体験で、ショックを受けました。
何か次元の違うものを体験しちゃった、という感覚です。スキューバダイビングと違っていたのですが、自分の中が開けるような変化。海中の魚、サンゴといった生命体の不思議。海中に届く光の美しさや温かさ、それを感じながら、翻って人間の不思議も感じる。宇宙であの感覚をもう一度経験できると期待しています。
プロフィール
大貫美鈴(おおぬき・みすず)
宇宙ビジネスコンサルタント。スペースアクセス株式会社代表取締役。
清水建設に勤務後、米国で宇宙ベンチャー企業の熱気を目の当たりにして帰国する。
JAXA(宇宙航空開発研究機構)勤務を経て独立。現在は宇宙ビジネスコンサルタントとして、世界中を飛びまわる日々。
著書に『宇宙ビジネスの衝撃』(ダイヤモンド社)、『来週、宇宙に行ってきます』(春日出版)など。
http://onukimisuzu.com/